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12月13日:「旅」で出会った石笛たち②

石笛倶楽部」の旅で守山が持ちかえった石笛を紹介します。
第2弾は「貫通孔の石笛」と「いくつも穴があいた石笛」です。

すべて「ヒビ」があって販売できない「石笛倶楽部」新規登録会員へのプレゼント
知り合いの宮司さんにも差し上げます。


貫通孔の石笛 
守山が演奏に使う石笛「蓮華」とぬなかわヒスイ工房の縄文NEO石笛




●貫通孔の石笛
貫通孔の石笛はヒスイなどの石材に人工的に穴をあけたものが縄文遺跡から出土しています。青森県の
上尾駁遺跡や熊本県の轟貝塚から美しい石笛が出土しています。

上尾駁遺跡の石笛は楕円形のヒスイに縦長の貫通孔をあけ中央に十字に交差する指穴をあけています。指穴は前後に貫通しているので2つです。
轟貝塚の石笛は形は上尾駁遺跡の石笛と似ていますが指穴は貫通しないで1つだけ。

今年亡くなられた古楽器研究者及川尊雄氏の「阿弗利加から旅してきた日本の楽器たち」には陸前高田市の
堂の前貝塚から出土した天然の貫通孔石笛が紹介されています。姿形は串本の石笛とよく似ています。

昔は「縄文遺跡」「石笛」などと検索すると「貫通していない自然石の出土石笛」がヒットしたのですが、現在では人工的に穴をあけた石笛しか出てきません(残念)。

縄文時代の石笛は吹くのが難しくヒスイなど貴重な石材を使っているので、おそらく「シャーマン」のような特別な身分の者だけが吹くことを許されていたのでしょう。

出土石笛に関する報告書を読んだり、実際にぬなかわヒスイ工房さんレプリカ石笛を吹いた経験から判断すると、
上尾駁遺跡轟貝塚の石笛は雄鹿の求愛の声「ラッティングコール」を吹いたと考えて間違いないでしょうそれ以上のことは憶測の域をでません)。



●ラッティングコール
ラッティングコール」は秋に発情した雄鹿が雌鹿を呼ぶ声です。「オオカミの遠吠え」にも似ています。各地の先住民族の狩人たちは声で「ラッティングコール」や「オオカミの遠吠え」を模倣しますし、狩猟用の鹿笛も作られています。
だからといって「石笛を狩猟に用いた」というのはあまりにあさはかな考え。
貴重なヒスイの石笛は集落から持ち出されることなく、一部の者しか見ることも触れることもできない秘宝だったと考える方がしぜんです。

石笛の音色にはさまざまな動物が呼応します。縄文集落の周辺は深い森林です。夜に石笛を吹くと、すぐそばで「ラッティングコール」が返ってきたことでしょう。この声が「神の声」「死者の声」だったのです。
守山も夜「ラッティングコール」を吹いていて、近くで雄鹿が鳴いたことがあります。守山の周囲100mくらいで野うさぎ?やタヌキ?がガサゴソ動くので叫びたくなるくらい強烈な体験でしたよ()。暗闇の中で小鳥も鳴きます。
みなさんも「縄文を語る」なら、真っ暗な山の中で石笛を吹いてみてください

守山が聴いた「ラッティングコール」はB6からD7前後に高くなる2音です。
石笛で再現してみました。    →「石笛で再現したラッティングコール
(個体差があって若い鹿だと高くなりますし立派な鹿だと低くなります)

貫通孔の石笛を吹ける人(守山は「有段者」と呼んでいる)なら簡単に「ラッティングコール」が再現できます。それくらいの「実力」があれば貫通していない石笛でも「ラッティングコール」ができますよ。


石笛を吹いたことのないみなさんは「私も石笛でラッティングコールをやってみたい」と思われるかもしれませんが、これも「3年くらい一生懸命修行したらひょっとして…」というレベルの高さ。
フィギュアスケートで「3回転+2回転の連続ジャンプ」くらいの難度です。
(とりあえず「声」で練習してみてください。「声」でできないことを石笛ではできません。)


あっ!!忘れてたァ!!
ぬなかわヒスイ工房の「指穴つき石笛」は「ラッティングコールできること」というコンセプトで作った石笛です!!
 あれなら簡単に「ラッティングコール」できますよ!!
草野球で「ホームランを打つ」程度の難易度です(



●「貫通孔のいい石笛」は貴重!!
守山愛用の貫通孔の石笛が写真の「蓮華」。がっつり「ヒビ」がはいっています。
①そもそも吹きやすい石笛は数が少ないです
②貫通孔の石笛は数が少なく非常に割れやすいです
③貫通孔で「最高の石笛」は底部の指穴を「全開」しても音が出ます

この厳しい「3つの条件」を満たした石笛は20年以上石笛を探している守山でも数個?
あればヒビのはいった「蓮華」を吹きません!!

けれども「条件2つ」を満たした石笛はソコソコみつかります。
吹きにくい」「ヒビがない」「指穴を全開できる」(なかなか大変です)
吹きやすい」「ヒビがある」「指穴を全開できる」(「蓮華」のタイプ)
吹きやすい」「ヒビがない」「指穴を全開できない」(こういうのが多いです)

条件1つ」なら簡単にみつかりますよ。
でも「吹きやすい」「ヒビがある」「指穴を全開できない」以外は…ねぇ?

誰でも「素晴らしい貫通孔の石笛」を手にできるようにぬなかわヒスイ工房山田修さんと作ったのが「縄文NEO」です。

縄文時代の石笛は吹口が大きく内部が狭くなっています。串本の石笛も同じです。ところが従来の「人工の貫通孔石笛」は穴が塩ビ管のように同じ太さです。「縄文NEO」では底部を狭くすることで吹きやすくて、すべての指穴を全開しても音が出る「完璧」な石笛を実現しました。「自然石」にこだわらない方は是非。



なんだか「前置き」が長くなってしまいました。
」で出会った貫通孔の石笛の個別の紹介は「続きを読む」↓で。













貫通孔の石笛を紹介します

石笛03 
ちょっと吹きにくい」「小さなヒビがある」「全開できない」石笛です。少し残念
吹きやすさ★★★★
操作性  :★★★★★★
音色   
★★★★★★
見た目  :★★★★★
基準音程 :B♭6〜B6(半開でG7)

総合評価 :★★★★★★
「なんかカワイイ」石笛(笑)。大きさも形も「タラコ」です。口径が大きいので不慣れな人には吹きにくそう。守山は全然気にならない。ヒビも探さないとワカラナイほど。音の出ない小さな穴が3つあいていて「あいてない方が美しい」。
特筆すべきは「音色」と「音域」。倍音が適度に混入した柔らかい音色。柔らかいのに「芯」が強い。心地よい「鎮めの石笛」。吹き飽きないタイプ。「音域」は守山なら3オクターブ出せる。「音量」のコントロールも自在で「飛天奏法」に最適。神事によし。演奏によし。の万能石笛(これで「全開しろ」というのは強欲)。
もちろん「ラッティングコール」も楽勝!!!
写真で上から吹くこともできる。吹きやすくなるが底部をあけることができない(涙)。



石笛05 
ちょっと吹きにくい」「ヒビがある」「全開できない」石笛です。
吹きやすさ★★★★
操作性  :★★★★★
音色   
★★★★
見た目  :★★★★★
基準音程 :B6〜C7(半開でG7)

総合評価 :★★★★★
写真上から吹く方が吹きやすく倍音が美しい「月光」系の音色になる。でも底部は閉じたまま(それでもいいケド)。
ややノイズがちな「清めの石笛」。「音域」は思ったより狭くて1オクターブちょっと?「抑えて吹く」テクニックをもつ人には「味のある音色」の石笛。「飛天奏法」は困難。
「ラッティングコール」は慣れれば大丈夫。



石笛10 
吹きやすい」「ヒビがある」「全開できる」石笛です。
吹きやすさ★★★★★
操作性  :★★★★★
音色   
★★★★★
見た目  :★★★★★
基準音程 :F6〜F#6(半開でD7)

総合評価 :★★★★
大きくて重い石笛。ヒビもあって落すと割れる(涙)。「大音量」も出ない。と書くと「ダメ石笛」みたいだが、「低音」と「全開」は魅力充分。
穏やかな「鎮めの石笛」。民宿山彦で3人で「能の音色」と感じたけど「能管」じゃなく「謡」の声に近い。音域は2オクターブ弱。演奏家が喜ぶ?石笛。
「ラッティングコール」もできるけど「巨大な雄鹿」の声?



石笛04(裏) 
吹きにくい」「ちょっとヒビがある」「全開できる」石笛です。
吹きやすさ★★★★★
操作性  :★★★★
音色   
★★★★
見た目  :★★★★
基準音程 :G#6〜A6(半開でF#7)

総合評価 :★★★★
写真の上から吹く。石笛に慣れていないと難しい。吹いてみると思ったより遊べる石笛で「少し枯れた音色」が面白い「鎮めの石笛」。音域は1オクターブちょっと。「全開」するときは「メリ」気味に。
「ラッティングコール」はこの石笛が最高に「鹿」っぽい!!

みつけたのは写真の向きで「ありゃぁ残念」と思ったものだ。ところが裏返すと…
石笛04(表) 
4つも穴があいている。
面白い」とか「便利」とか喜ぶ人もいるけど守山は好きじゃない(贅沢)。
知り合いの宮司さんにプレゼントしよう…


この向きだと貫通孔はスキマをあけるだけ。音色は美しいので、こっち側を吹くのもアリ。

吹きやすさ★★★★★
操作性  :★★★★
音色   
★★★★★
見た目  :★★★★
基準音程 :F6〜F#6(半開でF7)

総合評価 :★★★★★
音色は倍音が少し混ざった柔らかい音色。柔らかいけど「芯」は強い。なんか「神社っぽい」音色の「鎮めの石笛」。音域は2オクターブ弱。吹く角度によってはスキマをあけると音が出なくなる(悲)。
音量のコントロールもできるので「抑えて吹く技術」をもった人なら「飛天奏法」も。
「ラッティングコール」は裏から吹く方が気持ちいい。

写真で左端の穴も吹きやすくて音色がいい。

吹きやすさ★★★★★
操作性  :★★★★★
音色   
★★★★
見た目  :★★★★
基準音程 :G#6〜A6

総合評価 :★★★★★
音色はほぼ同じ(やや穏やか)な「鎮めの石笛」。吹口の口径と深さが理想的なので1オクターブ半ほどの音域で演奏可能。操作性がいいので「飛天奏法」に最適で吹き飽きない。

右から2番目の穴は小鳥の声のような高音域の「清めの石笛」(昇天系)。
D#7〜E7


右端の穴は落ち着いた「鎮めの石笛」。
B♭6〜B6


石笛1つで貫通孔の裏表。音域の違う3孔とさまざまな吹き方で楽しめる。
これで文句を言ったらバチが当たる?
(宮司さん喜んでくれるかな?)




石笛12 
1つに5つも穴があいた石笛です。左端は貫通しているけど残存している「ブリッジ」部分が割れそう。上のきれいな穴を閉じっぱなしで下の穴から吹く他ない。浅くて吹きにくい穴が3つ。メインで使うなら写真右端の深い穴。
吹きやすさ★★★★
操作性  :★★★★
音色   
★★★★
見た目  :★★★★★
基準音程 :B6〜C7

総合評価 :★★★★★
吹口が斜めになっている(斜孔)。ケーナを吹ける人なら吹きやすいカモ。音色は倍音が強く耳にビリビリくる音色。「払い」とまではいかない「清めの石笛」。使える音域が広くないので、狭い音域で遊べる人に。面白い石笛だと思うけど「飛天奏法」向きじゃない。
守山は「鈍角」でも吹ける。落ち着いた「鎮めの石笛(A6〜B♭6)」。

左端の貫通孔は「きれいな穴」を自分の方に向けて吹く方が吹きやすい。

吹きやすさ★★★★
操作性  :★★★★
音色   
★★★★★
見た目  :★★★★★
基準音程 :C#7〜D7(半開でF#7)

総合評価 :★★★★
石笛と顎との狭い空間で貫通孔に「フタ」をするが、吹いてみると気にならない。
もともと2つの穴が融合している。内部の形状がフクザツなので
ブレスの強弱で倍音の混合比が変わって変化にとんだ音色(これは貴重)。
音色は倍音が強い「清めの石笛」。音量のコントロールが容易で「飛天奏法」向き。
(それで拾ってきた)



石笛は「自然」そのもの。「道具」ではない。
自然」は人間の思うようにならないもの。
石笛も深く「理解」して、石笛に「合わせる」柔軟な心と頭を持った人が吹くもの。

石笛を理解しないで「1オクターブめざします」などと軽々しく言われるとどん引き
今回の「」では面白い石笛をたくさんみつけることができた。
差し上げるなら「ふさわしい人」に。


柔軟な心と頭をもった方、お待ちしております。


オマケ
割れた石笛 


クリーニングしていて割れた石笛。斜孔の貫通孔(全開可)。
「能みたい」と思った石笛が2つあったので、もう一つはコレか?
アロンアルファで接着すれば音は出るだろうけど、人にあげるのもナァ…

残念!!





テーマ : 博物学・自然・生き物
ジャンル : 学問・文化・芸術

プロフィール

守山 鷲声

Author:守山 鷲声
1958年秋田市生まれ
「石笛仙人」で動画配信中
「さすらいの越天楽吹き」
最近毎朝二日酔い…

笛馬鹿歴25年!!の
「ドレミ音階」の横笛作家
1300本作りました(笑)
いい笛をたくさん作って
悲しみ多きこの世界に
美しい音色を広げたいです
今年は少しスローペース?
めざせ月に2日の固定休!!

愛読書「口語訳古事記」
「梁塵秘抄」もなんとか読破
浮世絵(復刻)収集が楽しみ

笛の起源・クマバチ飼育・
縄文遺跡・山彦など研究

苦手なもの
電話・目薬・ラベンダー

還暦すぎて体はガタガタ
毎月の薬代>酒代なのが涙

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「笛の店 谺堂」から
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