イタドリの龍笛つくり①

ようやくパソコン仕事が一段落。竹の横笛をつくる前にイタドリで笛作り。
和歌山の龍神村の伝承では、山仕事の前に儀式があったそうです。生のイタドリで笛をつくり、切り株を太鼓代わりにたたいて、演奏を「山のカミサマ」に奉納してから山にはいったといいます。
 
その「イタドリ笛」の再現を龍神村在住の知人に頼まれて試作。守山も「越天楽」演奏用の龍笛をつくって吹いています。今回は横笛タイプの龍笛、本格的な龍笛、音楽仲間のAWAYAさんが演奏につかう「イタドリ篳篥」も製作します。
枯れイタドリ 
イタドリで笛をつくる手順と工具を紹介します。興味のある方はぜひ挑戦してみてください。





イタドリの横笛はドレミ音階には不向きです。ドレミ音階は(純正律であれ平均律であれ)1オクターブ上の音との差は1200セントと決まっています。ところが竹やイタドリという自然素材では必ずしも1200セントになりません。ドレミ音階では1200セントから外れたものは「誤差」になってしまいます。
日本古来の篠笛や龍笛の音階は竹からうまれる「自然な誤差」を利用してつくられています。ですから竹やイタドリとの相性がよく、笛をつくった時の違和感がすくないのです。

 ◎つくる笛

(龍神村ではイタドリのことを「ごんぱち」と呼んでいます)
●イタドリの龍笛(横笛タイプ)「龍パチ」
竹の横笛と同じ笛です。横笛の上手な人なら演奏できます。優しい音色が心地いいです。龍笛独特の「六」「ゲ」という運指を使わないので「越天楽」を演奏するのは楽。

●イタドリの横笛(龍笛タイプ)これも「龍パチ」
本物の龍笛と同じく吹口が大きい笛です。運指も龍笛と同じ。横笛を吹く人でも演奏は難しいです。かといって龍笛を吹いている人がイタドリ龍笛を吹いて喜ぶか?といえば、ど〜なんでしょうね。音色は龍笛に近い迫力もでます。これを守山は静かに優しく演奏したいところ。まだまだ技術不足で挑戦しがいがあります。本物の龍笛を吹く人の「目が点」になるのが楽しみ(フフフ)。

●イタドリの篳篥「パチリキ」
AWAYAのともきちさん専用(守山は篳篥が吹けない)。
AWAYAさんはともきちさんゆうさん2人のユニット。ゆうさんの「優しい歌声」をともきちさんの「やわらかで多彩なサウンド」が包みこんで、熊野の自然に寄りそうような曲を創り出しています。守山のイチオシの音楽仲間。
なかでもともきちさんの篳篥が印象的なのですが安いプラ管。「イタドリの篳篥ならAWAYAさんにピッタリ」と、2015年にイタドリとハンダゴテを持ち込んで、中辺路のスタジオで試作しました。のびのある優しい音色で愛用してくれていたのですが、2016年にスタジオが火災。「世界に一つ」の「パチリキ」も燃えてしまいました。

そこで新しい「パチリキ」をつくったのですが「高音域が使いにくい」とのこと。なんせ篳篥を吹けない守山がぶっつけ本番でつくるのですから、そう簡単にはいきません。そこで今回何本か作って、そのうち1本は塗装してみたいです。
AWAYAさん 
ともきちさん(左)ゆうさん(右)

◎材料の確保
イタドリは4月に新芽が出ます。そのとき去年のイタドリが立ち枯れているので収穫します。一冬乾燥しているので、竹とはちがってそのまま笛にできます。笛を作りはじめたころは材料の竹がなく、イタドリで横笛や尺八をつくったものです。雪の積もる地方では雪の重みで粉々に砕けるので「枯れイタドリ」は手にはいりません。
笛にするには「節の長いイタドリ」が必要。イタドリは節を抜くのが難しいのです。湿った日陰だと節が長くなるので「谷底」がねらい目。去年は80本ほど確保できました。


◎工具
龍神村では山仕事の前につくっていたので、特殊な工具は使えません。ヨモギなどの茎で節を抜き、小刀で吹口と指穴をあけるなどしていたと考えられます。ただ低音域から高音域までトラブルなく演奏するには節を完全に取り除かなければなりません。ヨモギの茎では20分くらい悪戦苦闘することも。やっぱり演奏用の笛ですから、いろいろと工具を使います。
ノコギリ
イタドリは普通のノコギリで切ろうとするとぼろぼろに割れてしまいます。山で切りとるときはナイフで鉛筆を削るようにして切りとります。どうしてもノコギリで切る場合は極端に目の細かいノコギリで。守山は「ピラニアソー」を愛用。

節抜き工具
守山は細い竹や笹、ステンレスのパイプなどを加工して節抜き工具をつくりました。竹は先端を槍のように尖らせて節を「突き切り」ます。残った節は反対側(竹の節)で押したり引いたり(なかなか取れない)。ステンレスのパイプは刃先を焼き入れ。簡単に節が抜けます。

刃物とヤスリ
刃物は「肥後の守」でもカッターナイフでもOK。厳密な調律をするならアートナイフ。ささくれやすいので棒ヤスリ(マジックサンダー)で磨きます。

瞬間接着剤

イタドリはささくれやすくて細かい成形が困難です。そこで瞬間接着剤を染み込ませて固まってから成形しています。
イタドリ笛作り工具 

◎所要時間
山の中で「龍神すたいる」でつくるなら20分もあれば。ていねいに節を抜いて調律をすれば2時間くらい?

◎製作開始
材料を切る
最初に長いままのイタドリから笛になる部分を切りとります。太さは吹口部分で19ミリ。いろいろ試作してみましたが、細いと音色に力がなく、太すぎると大きな音が出ますが音色が「薄っぺらく」なります。塗装するのでまっすぐな節を。守山の笛は「龍神すたいる」でワイルドに切ります。今回ゆうさんの龍パチも2本つくるので、少し細いイタドリをノコギリで切りました(写真中央)。
切り口にはササクレ防止に瞬間接着剤を染み込ませます。
完成した材料 
右が横笛タイプの材料、左が龍笛タイプ(肉厚で堅いイタドリを選んでいます)

節を抜く

最初に節を抜きます。ステンレスパイプの工具だと簡単。5分かかりません。
節抜き工具とノコギリ 
ステンレスパイプはリングの部分で節を搔き落とします(左端はワイパーの芯)

イタドリの内壁にそって突き刺していきます。一周して節が「丸く」抜けると完璧(写真中央)。のこった繊維は棒ヤスリでは取れないので工具で「搔き落とし」ます。このときスポンジ状の内壁を傷つけないように細心の注意をはらいます。
節を抜く 

吹口の位置
吹口は節に近い位置にあけます。節が唇に触れて吹きにくく感じますが、節から離すと高音域の誤差が大きくなってしまいます。表皮はささくれやすく内部がブロック状に割れやすいので、少し削っては瞬間接着剤を染み込ませます。
吹口の位置 

完成した吹口。吹いて筒音が出れば完璧。節が残ると低音が出ません。上が年末に演奏した龍パチ(けっこうボロボロ)。下が今回つくったもの。もちろん筒音はバッチリです。
吹口完成 

今日は材料選びで午前中いっぱいかかってしまった。午後も材料の節を抜いて1本の吹口をあけただけ。

明日も楽しみま〜す。



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プロフィール

守山 鷲声

Author:守山 鷲声
笛仙人・石笛仙人
かつて「ヤッホーおじさん」

自然の竹から「完璧な音階」を生み出す研究の日々。
1本1本形が違って打ちのめされることも…

愛読書「口語訳古事記」
ライフワーク「越天楽」独奏
浮世絵(復刻)収集が楽しみ
読み切りで漫画家デビュー
(デビューしただけ)

笛の起源・クマバチ飼育・
縄文遺跡・山彦など研究

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